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■ケアハウス・リバティーガーデン
 敷地は埼玉県越谷市の西端に位置し、浦和、岩槻、川口、越谷の4市の市境にある。東京都心から25km、電車で1時間ほどの距離では珍しく水田が付近に多く残っている。しかし、ここも都市近郊農地の例に漏れず、廻りには、中古車販売店や工場が点在し、用地確保が容易なためか、林立する高圧線が特徴的である。ここの水田であった1区画を、農地から転用し、このケアハウスは建てられた。ケアハウスとは厚生省の補助事業の一環として設けられたもので、自立した生活が可能な高齢者を対象とした、食事・入浴サービスや健康管理等のケアの付いた「ケア付き住宅」である。
 農地転用の許可条件として、第2種住居専用地域同等の高さ、日影制限が求められたため、東西に長い敷地を南北に2分するよう、この制限いっぱいに居室棟を配置した。この2分された空間に、管理棟、食堂棟、浴室棟を置き、その間にそれぞれ性格の異なる庭を用意した。これらの庭は可能な限り孤立せず、敷地全体が一つの連続した空間となるよう、それぞれの庭が内部空間で結ばれるよう構成した。そのため、主要な部屋は光の下に展開し、日中は、人工光がほとんどいらない運営が可能となっている。
 このような、開放的な内部空間を実現し、また梁型を室内に出さないよう、構造は、板状の柱、梁を基本としたRCのラーメン構造を採用している。南面はこの構造を切断したような格子をそのまま表した立面となっているが、ベイの巾や高さ、柱、梁のメンバー等を慎重に検討することで、単調に見えながらそこに微妙なリズムを作り出すように構成した。入り口のある北側の立面は、南側の格子状のフレームを投影したものに、白く塗られた壁をはめ込み、そこに、フィボナッチ級数で構成した、巾の異なるスリット窓を重ね合わせたものである。
 このコンクリート打放しのフレームは白く塗られた壁に対しての枠となるよう、10mmのチリで納められている。これはブルネレスキによるサンロレンツオ教会やパッツィーチャペルのフレームと白い壁面が創り出す不思議な透明感を意識しながら作り上げたものである。敷地の廻りには、囲い込まれた庭を作り出すために建築化された塀をめぐらした。これは隣接する県道や、付近の工場が気にならないよう廻りと切り離す役割と、将来、市街化した際にもこの環境を守るために必要と考えたためである。
 この計画では、廊下の広さなどは、車椅子が通行可能な最低限の広さにとどめ、限られた面積を極力、居住者が楽しむためのスペースに割り当てた。ここで目指したのは、高齢者が住むための家を造ることであり、入居する事を楽しみに出来るような建物であった。
 そのためにここでの庭は、見て楽しむばかりでなく、積極的に触り、臭いを嗅ぎ、自ら育て参加する庭として用意されたものである。敷地の南の隣接地も、長期にわたってお借りする事になっており、ここを畑として用い、入居者が田園生活を楽しむ場所として計画されている。リバティーガーデンと銘々した、建て主の願いが実現される事楽しみにしている。
所在地:埼玉県越谷市
用途:福祉施設(軽費老人ホーム)
構造:鉄筋コンクリート造
延床面積:3215.30m2
構造設計:構造設計社
設備:ZO設計室
施工:清水建設
写真:新建築社写真部

雑誌掲載
・新建築 1999年8月号
・JAPAN ARCHITECT NO.36
 1999年 建築年鑑27作品に掲載
・オーナーのための高齢者施設
 ガイドブック 2009年12月

受賞
・彩の国さいたま景観賞
・越谷市建築景観賞