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■特別養護老人ホーム 紫水苑 新館
紫水苑新館ー新型特養と従来型の間で
敷地周辺は宅地開発が進みつつある市街化調整区域で、以前からあった雑木林の法面に囲まれたところである。
現在、国が主導する特別養護老人ホームは10人以下の生活単位をまとまりとする個室主体のユニットケアによる新型特養であるが、1999年に竣工した既存本館は個室から4人部屋までを複数組み合わせて配置し、トイレは共用という従来型の施設である。この施設の増床に際し、新型か従来型かという選択が最初の岐路にあった。選択されたのは既存施設との連携と地域事情を考え、入居者の費用負担の差がつきすぎず、ケア体制も踏襲できる従来型での建設であり、この方法がもっとも現実的な方法と判断された。

従来型をアレンジし、光を入れる
まずこの増床計画の中で解決しなければならないことは居室のあり方そのものであった。ここで、私たちが採用したのは、従来型ではあるが、日の射さないベッドができてしまう単純な多床室を避け、3人用の居室を一単位として角部屋になるよう配置し、これを間仕切り、3つの個室とトイレ、洗面がある、居室単位 (これを私たちは「3人床」と名付けた)を造ることにした。こうすることで、各部屋に光が入るようになり、個室の入り口はメインの廊下から少し奥まったところにくるので、プライバシーの高い居室となった。そして「3人床」からの入り口は廊下の幅も広くし、門灯をつけた内玄関風の設えとしたことで、部屋が並列に並ぶ単調さも避ける事ができたように思う。



中庭を囲う
配置計画は、2層12室からなる居室棟3棟と管理棟、浴室棟、そしてターミナルケアを視野に入れたゲスト棟の6つのブロックを、十分な光が入るよう、それぞれを離しゲスト棟は既存の受水槽や石垣と平行に置くことで、能舞台のように他の棟から少し振られた配置となり、中庭の構成要素の一つとなるように扱われている。
駐車場は1.5m程マウンドアップし、居室棟との緩衝ゾーンとして傾斜した緑地帯を設けた。最終的には新築棟全体は雑木林に囲まれるようになり、緑に囲まれたリゾートライクな環境になったと思う。
建築全体の設計を通して意識したことは、終の住処として、生活の各場面で居心地よく暮らせるよう配慮することで、テーマは明るさと、広がりを特に重視した。でき上がった建物は十分な光と緑に囲まれ、期待通りのさわやかな空間に仕上がったように感じている。
所在地:埼玉県川口市
用途:特別養護老人ホーム
構造:壁式鉄筋コンクリート造
延床面積:1946.15m2
構造設計:構造設計社
設備:島津設計
施工:安藤建設
写真:平井広行
   新建築社写真部

雑誌掲載
・新建築 2007年7月号
・iA 09 2008年4月
・オーナーのための高齢者施設
 ガイドブック 2009年12月