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ギャラリー クゥオン   

建物が竣工した後で、テナントとして入居が決まったのが「ギャラリーKWON」。
「ギャラリーKWON」は、携帯電話のカラー液晶パネルで世界シェアの約40%を獲得し、またトヨタ、現代自動車等にカーナビのガラス製タッチパネルを供給する企業であるミクロ技術研究所(吉川実社長)--技術ノウハウを開発しそれを関連会社に技術供与する会社、数年前までは全て自社で製造していたがこれを切り離し分社化を進めている。
ECパネルの基本技術はここが持っている--のグループ会社である(アイ・ティ・エス)が、今では忘れられた技術である「ECパネル」を製造し、展示運営するギャラリー。KWONとはアイ・ティ・エスの「ECパネル」とは、合せガラスの間に特殊な液体(液晶)を注入したパネルで、電圧をかけると電気イオンが変化し、透明ガラスがゆっくりと青くなり、またゆっくりと透明に戻るのを繰り返す。
これは30年前に開発された、液晶と実用化を争った技術で、青しか発色しないこと、変色の反応速度が遅いことから、実用の展開を見ないまま死蔵されていた技術。
変色の反応速度は、透明→青→透明の1サイクルにおよそ1分かかる。
アイ・ティ・エスは液晶等の表示技術の最先端を争う企業で、技術開発に明け暮れる日々。
高性能な機能を追い求めると必ずコスト競走に巻き込まれ、たとえ勝利したとしても短期間で勝者が入れ替わる世界であり、このような世界には未来はないと感じることが多いと言うのが吉川社長持論である。
そのなかで改めて「ECパネル」を見直すと、その青さには忘れ難い魅力があり、またその反応速度の遅さにも価値があるはずとの思いと、このような考え方の市場性を探り、いろいろな方の意見を伺うために、このギャラリーを作ることにした。
出来上がった空間はゆったりとした時間がながれ、パネルがゆっくりと透明から青に変わる事で、ゆったりと雲の流れる空や、潮の流れに身を任せて海の中でタユタッテイル気分を思い起こさせ、意外な「癒し」の空間となった。新技術の種を探すための打合せや、接客にこの空間を活用している。をもたらすのではないかと気付き、これを広く知らしめるギャラリーを持ちたいと考えるに至った。
テナントとして入居する建物を設計した建築家に、「ECパネル」をどう見せるか、その潜在的な魅力をどんな形で展示すればいいかという相談がきた。
オブジェのような立体を製作する、ジュエリーケースにも使えるような小物を製作する、などの試行錯誤の結果、プロダクツを製作・展示するのではなく、「ECパネル」を建築化し、緩やかに変化するブルーのグラデーションの光で満たされた空間そのものを一つの環境として表現し展示する方向でいくことになった。
「ECパネル」をスクリーンに仕立てることにした。
「ECパネル」の製作可能寸法は理論的には最大50cm角程度だが、液晶を安定させるためには20cm角までのものが現在では製作可能である。今回はまとまった量で安定した製品が得られる10cm角・20cm5cm角のものを主体に考えることにした。
「ECパネル」の可能性を引き出すため、3種のスクリーンをつくることにした。

自然光の当たる場所に自立する「透過スクリーン」、間仕切り壁の全面に展開しコンピュータ制御で自動的にパターンが変わる「表示壁」、75cmの奥行きをもつアクリルボックスに二重にスクリーンを配し背後から照明を当てる「光る壁」の3種である。
クリアしなければならない細かな技術的な問題が多々あり、アイ・ティ・エスの技術者と一緒に展示する方法を開発した。
建築化するにあたって留意したことは、まず、狭いギャラリーに3種のスクリーンを配することで相乗効果を上げる配置のしかた。配線を見せない、またはデザイン要素として取り入れてきちんとデザインして見せる。

透過スクリーン(入り口近くに設置)-透過する光りで青を表現-
パネルを留めるものとして、当初はステンレスワイヤーが検討されたが、電気抵抗が大きいため見送られた。採用されたのは3φの真鍮製ロッドで、なるべく細くする検討を行い、この太さならば床と天井の両方から通電することで、電圧降下がパネルの表示に影響を与えないとの判断であった。(ECパネルの周囲には吉川社長の工夫になる真鍮にスズメッキされた電極が、ガラスパネルに留るようC型の断面で、2mmごとに刻みがつけられたものが取り付けられている。パネルの周囲に4周回っているように見えるが、これは、パネル周囲にプラスとマイナスがそれぞれL型に取り付けられている。)そしてこのロッドをECパネルの美しい銀色の電極と表現合わせるため、クロームメッキを施し、天井と床のボックス内で固定し通電した。パネルの取り付けは、ロッドにECパネルを引っ掛けるコマを取り付け、ECパネルの電極にさらに取り付け用の爪を取り付けで、わずかなハンダを使いながら引っ掛けるように留めてある。電線はそれぞれのロッドから床のアルミ製蓋の下のトレンチと天井内を通って、事務室内に設置されたコントロールボックスに通じている。ここのコントロールボックスには、簡単なコンピューターと、トランスがあり、ゆっくりと人が呼吸する早さで色が変化するよう作動させている。

表示壁(斜めに入り口奥に設置)
仕事の依頼のある前からミクロ技研で製作していたユニット化されたパネルを用いて展開した。それは5cm角のECパネル256枚(16×16)を1ユニットとしこれを24ユニット用いて構成されたものである。この5cmのパネルは正面から脱着可能なよう差し込み式になっており、黒い縁がそれである。このため裏に配線が隠せるため、比較的複雑な表示が可能である。(この黒い縁は他のものに変えられず、連続させることでその印象を弱めたが、青に対して強すぎる感は否めない)このユニットはコンピューター制御によりいろいろなパターンが表示可能で、1ユニットに1組のトランスとコンピューターが裏側の骨組みに設置されている。

光る壁(窓に平行に部屋の奥に設置)
-壁面自体が光るパネルとして表現-
ステンレスの棚に、アクリルボックスに組み込まれたECパネルを設置しバックライトに照らされた壁面として表現した。構成はステンレスの棚全体がアース側とし、アクリルボックスの正面と奥の2セットの ECパネルにステンレスの棚板内に組み込まれた配線により電気を通し、棚下部に組み込まれたコンピューターと、トランスによりコントロールしている。バックライトは棚の裏側に蛍光灯を設置している。

建物が竣工した後で、テナントとして入居が決まったのが「ギャラリーKWON」。
「ギャラリーKWON」は、携帯電話のカラー液晶パネルで世界シェアの約40%を獲得し、またトヨタ、現代自動車等にカーナビのガラス製タッチパネルを供給する企業であるミクロ技術研究所(吉川実社長)--技術ノウハウを開発しそれを関連会社に技術供与する会社、数年前までは全て自社で製造していたがこれを切り離し分社化を進めている。
ECパネルの基本技術はここが持っている--のグループ会社である(アイ・ティ・エス)が、今では忘れられた技術である「ECパネル」を製造し、展示運営するギャラリー。KWONとはアイ・ティ・エスの「ECパネル」とは、合せガラスの間に特殊な液体(液晶)を注入したパネルで、電圧をかけると電気イオンが変化し、透明ガラスがゆっくりと青くなり、またゆっくりと透明に戻るのを繰り返す。
これは30年前に開発された、液晶と実用化を争った技術で、青しか発色しないこと、変色の反応速度が遅いことから、実用の展開を見ないまま死蔵されていた技術。
変色の反応速度は、透明→青→透明の1サイクルにおよそ1分かかる。
アイ・ティ・エスは液晶等の表示技術の最先端を争う企業で、技術開発に明け暮れる日々。
高性能な機能を追い求めると必ずコスト競走に巻き込まれ、たとえ勝利したとしても短期間で勝者が入れ替わる世界であり、このような世界には未来はないと感じることが多いと言うのが吉川社長持論である。
そのなかで改めて「ECパネル」を見直すと、その青さには忘れ難い魅力があり、またその反応速度の遅さにも価値があるはずとの思いと、このような考え方の市場性を探り、いろいろな方の意見を伺うために、このギャラリーを作ることにした。
出来上がった空間はゆったりとした時間がながれ、パネルがゆっくりと透明から青に変わる事で、ゆったりと雲の流れる空や、潮の流れに身を任せて海の中でタユタッテイル気分を思い起こさせ、意外な「癒し」の空間となった。新技術の種を探すための打合せや、接客にこの空間を活用している。をもたらすのではないかと気付き、これを広く知らしめるギャラリーを持ちたいと考えるに至った。
テナントとして入居する建物を設計した建築家に、「ECパネル」をどう見せるか、その潜在的な魅力をどんな形で展示すればいいかという相談がきた。
オブジェのような立体を製作する、ジュエリーケースにも使えるような小物を製作する、などの試行錯誤の結果、プロダクツを製作・展示するのではなく、「ECパネル」を建築化し、緩やかに変化するブルーのグラデーションの光で満たされた空間そのものを一つの環境として表現し展示する方向でいくことになった。
「ECパネル」をスクリーンに仕立てることにした。
「ECパネル」の製作可能寸法は理論的には最大50cm角程度だが、液晶を安定させるためには20cm角までのものが現在では製作可能である。今回はまとまった量で安定した製品が得られる10cm角・20cm5cm角のものを主体に考えることにした。
「ECパネル」の可能性を引き出すため、3種のスクリーンをつくることにした。

自然光の当たる場所に自立する「透過スクリーン」、間仕切り壁の全面に展開しコンピュータ制御で自動的にパターンが変わる「表示壁」、75cmの奥行きをもつアクリルボックスに二重にスクリーンを配し背後から照明を当てる「光る壁」の3種である。
クリアしなければならない細かな技術的な問題が多々あり、アイ・ティ・エスの技術者と一緒に展示する方法を開発した。
建築化するにあたって留意したことは、まず、狭いギャラリーに3種のスクリーンを配することで相乗効果を上げる配置のしかた。配線を見せない、またはデザイン要素として取り入れてきちんとデザインして見せる。

透過スクリーン(入り口近くに設置)-透過する光りで青を表現-
パネルを留めるものとして、当初はステンレスワイヤーが検討されたが、電気抵抗が大きいため見送られた。採用されたのは3φの真鍮製ロッドで、なるべく細くする検討を行い、この太さならば床と天井の両方から通電することで、電圧降下がパネルの表示に影響を与えないとの判断であった。(ECパネルの周囲には吉川社長の工夫になる真鍮にスズメッキされた電極が、ガラスパネルに留るようC型の断面で、2mmごとに刻みがつけられたものが取り付けられている。パネルの周囲に4周回っているように見えるが、これは、パネル周囲にプラスとマイナスがそれぞれL型に取り付けられている。)そしてこのロッドをECパネルの美しい銀色の電極と表現合わせるため、クロームメッキを施し、天井と床のボックス内で固定し通電した。パネルの取り付けは、ロッドにECパネルを引っ掛けるコマを取り付け、ECパネルの電極にさらに取り付け用の爪を取り付けで、わずかなハンダを使いながら引っ掛けるように留めてある。電線はそれぞれのロッドから床のアルミ製蓋の下のトレンチと天井内を通って、事務室内に設置されたコントロールボックスに通じている。ここのコントロールボックスには、簡単なコンピューターと、トランスがあり、ゆっくりと人が呼吸する早さで色が変化するよう作動させている。

表示壁(斜めに入り口奥に設置)
仕事の依頼のある前からミクロ技研で製作していたユニット化されたパネルを用いて展開した。それは5cm角のECパネル256枚(16×16)を1ユニットとしこれを24ユニット用いて構成されたものである。この5cmのパネルは正面から脱着可能なよう差し込み式になっており、黒い縁がそれである。このため裏に配線が隠せるため、比較的複雑な表示が可能である。(この黒い縁は他のものに変えられず、連続させることでその印象を弱めたが、青に対して強すぎる感は否めない)このユニットはコンピューター制御によりいろいろなパターンが表示可能で、1ユニットに1組のトランスとコンピューターが裏側の骨組みに設置されている。

光る壁(窓に平行に部屋の奥に設置)
-壁面自体が光るパネルとして表現-
ステンレスの棚に、アクリルボックスに組み込まれたECパネルを設置しバックライトに照らされた壁面として表現した。構成はステンレスの棚全体がアース側とし、アクリルボックスの正面と奥の2セットの ECパネルにステンレスの棚板内に組み込まれた配線により電気を通し、棚下部に組み込まれたコンピューターと、トランスによりコントロールしている。バックライトは棚の裏側に蛍光灯を設置している。

所在地:
東京都港区南青山
用途:
店舗
設計:
矢板建築設計研究所
統括:
矢板久明 矢板直子
施工:
ディー・プレーン
写真:
  平井広行
* 矢板建築設計研究所

雑誌掲載

新建築 2003年11月号
・ディテール 2004年 夏季号